内科診療メモ



内科全般に対応できるように心がけております。各疾患の「診療ガイドライン(EBM)」は、関係学会からの診療指針ですので、それらを参考にして個々の患者さんの症状を確認し、ご希望も伺いながら、診療方針を決めています。代表的な疾患に対する診療方針を簡単に述べてみますので、参考にしていただければ、幸いです。


当院の内科では、下記の疾患等に対応して診療しています。

循環器疾患: 高血圧症、不整脈、心不全、心臓弁膜症、狭心症、心筋梗塞、脳卒中など

呼吸器疾患: 上気道炎、鼻炎、咽頭炎、気管支炎、肺炎、気管支喘息、肺気腫、肺腫瘍など

一般内科: 脂質異常症、2型糖尿病、甲状腺疾患、急性腹症、下痢、便秘など

特定健診(40−74歳)、高齢者特定健診(75歳以上)

ワクチン: 肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチン、破傷風ワクチン, B型肝炎ワクチン、帯状疱疹ワクチン、風疹ワクチン、コロナワクチン



1.
循環器疾患
心筋梗塞、心不全、不整脈、脳梗塞、脳出血など循環器疾患の多くは、血管の動脈硬化症(以下動脈硬化と略します)に基因した疾患群です。循環器疾患にかからないようするには、動脈硬化を予防することが一番大切です。予防といっても自分では努力できない遺伝要素や老化現象も動脈硬化を悪化させますし、自分でコントロールできる食事、運動、喫煙、飲酒、ストレスなど生活習慣の違いによっても、動脈硬化の程度は変わります。種々の疾患のうち高血圧、糖尿病、高LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の3大疾患を適切に治療することで、動脈硬化の進展をかなり防ぐことができ、健康寿命を延ばします。動脈硬化を予防する生活習慣を身につけ、必要最小限な薬を飲んでいただくようにお話をしております。次に、動脈硬化に関与する3大疾患についての診療メモを記載します。
1) 高血圧症 HT
高血圧症は、自覚症状が少なく健診や自宅の血圧計で測定して気がつき、来院される方が多いと思います。最大血圧が200mmHg以上では頭痛、吐き気などの症状がでてくることがあります。
診断及び治療は、最新の「高血圧治療ガイドライン2019」を基本としています。高血圧は動脈硬化に与える最も大きな因子であり、75歳未満では、診察室では140/90mmHg以下(家庭では135/85mmHg以下)を降圧目標としています。家庭血圧も降圧薬の量を調節する要素として考えていくことになりました。家庭用の電子血圧計(上腕タイプがいい)が比較的安価に手に入りますので、起床時と就寝前の2回の測定をお勧めしています。先ず、薬に頼らずに、肥満の方は減量、有酸素運動、節酒、減塩食(1日食塩で6g以下)をお勧めし、目標に達していなければ薬物の服用をお勧めいたします。高血圧治療中は、脳・心臓・腎臓・血管・眼底などの各臓器障害の有無もチェックし、それぞれの必要な検査をしていただくことがあります。治療面では、よく効く降圧薬が開発されていますので、12剤で目標の血圧値に管理することが多くなりました。
2)2型糖尿病(DM)

3)高脂血症(=脂質異常症)


2.呼吸器疾患
呼吸器疾患には、咽頭炎、気管支炎、扁桃炎、アレルギー性鼻炎、インフルエンザ、肺炎、慢性閉塞性肺疾患、気管支喘息、肺結核などがあります。症状としては、ノドの痛み、鼻汁、後鼻漏、咳(痰を伴うか伴わないか、色は透明か黄色か緑がかっているか)、息苦しいなどの症状がでます。熱があるか否かも大事です。これらの症状の発現と聴診器による呼吸音の聴取、血液酸素飽和度(SaO2)によっておおまか診断が可能ですが、胸部X線検査も必要に応じて、撮影します。
当院では、咽頭炎、気管支炎が最も多く、インフルエンザがそれに続きます。ノドの痛み、鼻汁、後鼻漏、咳などとともに息切れ(息苦しい)があれば、呼吸器疾患を第一に考えなければならない症状です。また、熱があれば、積極的に血液検査、必要に応じて溶連菌迅速検査、インフルエンザ検査、マイコプラズマ抗体検査などを行い、診断の助けにします。
肺炎、慢性閉塞性肺疾患、気管支喘息、肺結核などが疑われるときには、血液酸素飽和度(SaO2)や胸部X線検査(当院はデジタルX線装置)をします。また、慢性閉塞性肺疾患、気管支喘息などでは、肺機能検査をして肺活量、1秒率などを測定して、診断を確定します。
典型的な気管支喘息では、夜に床にはいると息をはくとき(時に息を吸うときにも)にヒューヒュー、ピーピーと気管支音が聞こえ、息苦しくなります。この息苦しさは気管支拡張薬で劇的に改善します。そうなれば個々の疾患にあった治療が必要になります。
また、40歳以上の喫煙者および濃厚な受動喫煙者は、年1回の痰細胞診検査や胸部X線検査が有用です。胸部X線検査で異常な陰影の疑いがあれば、胸部CT検査をうけていただきます。


3.一般内科
1
高脂血症(=脂質異常症)
高脂血症は、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪(トリグリセリド)など、どれかが高い時を言います。
総コレステロールは、3/4が肝臓で合成され、1/4が食事から吸収されることがわかってきました。したがって、食事の影響は少なく、コレステロールをまったく含まない食事をしても20%位しか総コレステロールの値は低下しません。コレステロールの高い方は肝臓でのコレステロール合成が多い方といえます。そのため、コレステロールを低下させるためには、コレステロールを作る酵素を阻害する作用のある薬スタチンが有効です。スタチンには、作用の弱いものからから強いものまであり、個々の目標値まで下げることが可能です。適切なLDLコレステロール(悪玉コレステロール)の目標値は、冠動脈疾患、高血圧、糖尿病のない人、ある人によって異なりますが、130160mg/dl以下を目標にしています。なお、中性脂肪は、食後より食前の方が食事の影響が少なく正確な値がでますので、12時間以上の絶食後の採血がベストです。中性脂肪は、コントロールできる薬が少なく、甘い物やアルコールの制限など食事療法が中心です。

2 2型糖尿病(DM)
40
歳以降の中高年者に多い2型糖尿病は、糖尿病の9095%を占めるといわれています。糖尿病は、ノドが渇く、多飲多尿などの症状が知られていますが、多くは健診や他の病気で血液のHbA1cが高いことで見つかる方が多いように思います。
2
型糖尿病は、膵臓からの@インスリン分泌低下やA相対的インスリンの欠乏のために糖質が消費されず高血糖になる病気です。Aは肥満か内臓脂肪があるため、インスリンの分泌がよくても、相対的にその効果が少なくなる為に、高血糖になると考えられています。高血糖が長く続くと臓器障害や血管障害が出てきて、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、心筋梗塞など恐ろしい病気を引き起こします。HbA1cは、3ヶ月間の平均血糖値を正確に表すといわれています。HbA1c6.5%以上あれば、糖尿病の疑いがあります。HbA1c6.0%以上の場合でも糖尿病になりやすい予備群であり、ご飯は150g以下(正確にキッチンスケールで)にして肥満をふせぎ、適切な有酸素運動をする習慣をつけ、発症予防に努めるようにしましょう。
治療面では、多くは経口糖尿病薬(23剤)で管理することができるようになりましたが、昔からあるインスリンの注射療法は極めて有効で、1型などインスリン分泌低下やほとんど出ない方に適応があります。血圧のコントロールも大切で、糖尿病のある方は、ない方より低めの130/90mmHg未満が合併症を防ぐ目標として推奨されています。
なお、当院は「旭川地区糖尿病地域連携クリティカルパス」(トップ参照)に参加しておりますので、そちらもご覧ください。